島の病院の働き方

島の生活・暮らし

皆さんこんにちは、隠岐島前病院の白石です。
隠岐での生活や暮らしについてご紹介したいと思います。

まずは、私が隠岐島前病院に勤めるようになった経緯をお話します。
平成10年春に、1年頑張って来いといわれて、送り出されて早いものではや26年になりました。その当時の隠岐島前病院は、19床の島前診療所でした。

まさか縁もゆかりもなかったこの地でこのように長居し、いろいろな人と出会い、医療を行って、また生活していくとは夢にさえ思いませんでした。0歳で来た長男は今年27歳になり、子供の数も4人になりましたが、すでに半ば巣立って島を離れてしまいます。


そもそもは徳島から島根に赴任してくることになったときに、上司より「島根は海も山もあるが、どちらが良いか?」と質問されました。徳島では山の中の診療所で、山の上の家に往診もしたし、しし肉も食ったし、鹿の刺身もたべたし・・・などと思いながら、「今度は海に」ということで、たまたまやってきたのが西ノ島町だったのです。

隠岐に来るのははじめてで、来る前にはいろいろと不安がありました。子供のための保育所はあるのかな?とかスーパーはあるかな?もっといえば、電気は?水道は?とありえないくらいの心配もしていました。

来てみると何のことはない、普通に4000人(当時)が暮らしている町でした。もちろん保育園も小学校も中学校もあります。

確かに朝刊はフェリーで昼に到着するし、年に数回は時化になって全ての船が止まったりします。欠航が数日続くと、牛乳や卵、野菜など生鮮食料品が欠品します。海に囲まれた生活は初めてでしたが、かなり新鮮で、たのしく、自分に海に親和性のあるDNAがこんなに流れていたのか、と驚いたくらいです。


自然は雄大で、人は開放的でホスピタリティにあふれ、仕事もやりがいがあり、思いのほか非常に充実した離島ライフを過ごすことが出来ました。海産物はほとんど食べ放題です。

来て1年で小さいながらクルーザーヨットを持つようになり、休みの日にはセーリングしたり、自分でも釣りに行ったりするようになりました。

こんなに楽しい生活は1年では足りないなと思い、もう1年、もう1年と現在に至っています。


地域医療に興味を持っている皆さんへ

最近、「保健医療福祉の連携」や「地域包括ケア」などという言葉をよく聞きます。
でも、それって具体的にどういうこと?って思いますよね。

隠岐島前病院にくればそれが分かります!
地域に根ざし、地域をまきこんだ医療を実践しているからです。

それでは当地での救急→医療→介護→予防活動への流れを簡単に説明します。


まず救急、そして救急隊との連携

隠岐は本土からフェリーで3時間かかる離島です。
島で唯一の病院なので、救急患者さんはもれなく隠岐島前病院を受診されます。そこで総合医として働く医師や総合看護を行う看護師がまず診ます。

たらいまわしをすることはありません。
たらいまわしをするところもありません。

救急車も1台で救急隊も2チームしかありません。
病院と消防で共同で定期的に救命救急処置の研修会を開催しています。救急救命の技量をブラッシュアップするとともに、そういう限られた地域だからこそ、顔の見える関係を築くことができています。

当院は夜警のスタッフを含め全職員が、BLSを受講しています。
看護師はICLSコース※受講率100%です。
※Immediate Cardiac Life Support:心停止時の最初の10分の対応のトレーニングコース

救急患者さんを診察した上で、出来ることはするし、出来ないことは必要なところへ紹介します。緊急度によってはヘリコプターで患者搬送することもあります。


医療

当院で完結できる症例の場合には、入院治療をしっかり行います。

基本的には患者さんの希望に沿う形で、相談しながら医療を提供します。医療を行わないという 選択をすることもあります。ご高齢の方で家族に囲まれて看取らせていただく場合などです。

医療行為がない場合でも、患者さんのそばに寄り添うということは忘れないようにしています。 高齢者が多いため、疾病も一つではなく、全科的な診療、治療が必要とされます。


医療から介護へ

治療が終了した後、介護へつながる部分に関しても医療者として責任を持ちます。
もちろん病院職員だけでは出来ません。地域包括ケアセンター、ケアマネージャー、デイサービス、老人ホームのスタッフ、ヘルパーなど在宅系のスタッフとの連絡会を定期的に行っています。

隠岐島前病院内で連絡会を行うことで、医師も参加しやすく、在宅系のスタッフにとっても病院の敷居がひくくなり、密な連携が取れています。
そうすることによって、医療から福祉への流れをシームレスに行えるようにしています。

イメージとしては西ノ島町全体が病院のような感じでしょうか。必要があれば病院から往診や訪問看護も行います。 また、末期の癌や老衰なども希望があれば、この在宅スタッフとともに在宅での看取りも行っています。

救急医療介護から予防活動

そうして培った現場の医療、介護の意見をもって、保健師さんと一緒に予防活動を行っています。 健康教室や各種イベント、西ノ島町健康づくり推進協議会のメンバーとしても活動しています。


地域医療を、まずは見学から

救急→入院医療→介護への流れを全て見渡すことが出来、本当に自分たちの医療行為がその人の幸せにつながっていることを確認することが出来ます。医療の結果が予後良好ばかりではありませんが、それでも患者さんや家族の方から、ありがとうの言葉をかけてもらえる。

その言葉を聞いて、医療者も幸せを感じることが出来る。 これこそ、まさに地域医療の醍醐味です。

こういった保健医療福祉サービスを提供する医療、看護に興味のある方、一緒に働いてみませんか?
まずは見学からでも大歓迎します!

御来島おまちしております。

令和6年7月 隠岐島前病院 参与 白石吉彦

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