体験実習について(看護学生・薬剤師学生)
看護体験感想文 S.Nさんより(東京:看護専門学校1年生)
■ 何ができなくなるか・・・ではなくて、そこで何ができるか。
今まで漠然と興味を持っていた「地域医療」が、今回初めて自分の中で少しリアルになった。
地域医療は、やりがいと同時に少なからず犠牲を伴うものだというイメージを持っていたが、
そんなことは全然ないのだと思った。要は自分の考え方次第なのだ。
『何ができなくなるか・・・ではなくて、そこで何ができるか。』
この言葉がとても印象に残っている。確かに島に来たら東京では当たり前にできたこともできなく
なることは沢山ある。でも逆に東京ではできないことで、ここでしか出来ないことも沢山ある。
院長先生の生き生きとした目はとても印象的で、家族との時間を大切にしているという言葉も
とても説得力があった。
■ 専門外ならば、自分から身につけていく柔軟さ
あとは、『線を引きすぎないこと』。今まであまり考えたことがなかったけれど、分野を細かく
分けて専門化することは、とても悠長な話なのだと思った。人がいればそれができるが、
いなければいる人で何とかしなければならない。その時に、自分の中で「それは自分の分野外」
と頑なにならずに、それならばその要素を自分が身につけよう、と思える柔軟さ。
隠岐島前病院にはそういう考えを持った方が沢山いらっしゃったように感じた。
自分もそういう考え方をできる人間でありたいと思った。
『医者が偉くない』ということも印象的だった。訪問看護や往診、養護老人ホームの診察や
地域ケア会議を見せていただいて、どこにいっても"繋がり"を感じた。建物は離れているが、
自宅や養護老人ホームが病院の離れのような存在で(もしくは病院が自宅と渡り廊下で
つながっている様なイメージ)、患者さんはさぞかし心強いだろうと思った。
■ 患者さんとの特別な瞬間を共有
今回私は院長先生と訪問看護師さんとHさんという患者さんのお宅に3日連続で往診に
お供させていただいたのですが、院長先生がわざわざ出向く、という感じではなく、
あくまでもちょっとそこまで様子を見に行くというラフな感じだったことがとても驚いた。
症状の原因が判明して、旦那さんの症状がよくなってきた時の奥さんの顔が忘れられない。
ああいう瞬間を共有できることは、地域医療ならではだと思って、私も嬉しくなった。
具体的な話では、特浴介助の際に患者さんに両手を合わせて「ありがたい、ありがたい」と
拝んでいただいた時。今まであまり脈絡のない話しかしていなかった患者さんが私が東京へ
帰る前日に急に「明日帰ってしまうんでしょ」といってくれた時。訪問看護で介助後お茶を
だしていただいて、お話をしていてその方の人生を少し知れた時。たった一週間でしたが、
胸がトクンとする瞬間が沢山あった。
■ 当たり前だったことが当たり前ではない
最後に、私は隠岐から東京に帰ってきてとても大切なことに気づいた。『何ができなくなるか
ではなくて、そこで何ができるか』という考え方は都会→田舎だけでなく、田舎→都会でも
同じことが言えるということだ。田舎にあるものを都会に探して羨むばかりではなく、少なくとも
今は都会に住んでいるのだから、ここでできることをもっとしないといけない。そう考えると、
今自分がすべきことが次々に浮かんできて毎日が楽しくなってきた。
当たり前だったことが当たり前ではないことに気づけたのは、自分にとって大きな発見だった。
医療界に足を踏み込んで、まだたったの4ヶ月でこのような経験ができたことはとても
いい刺激になった。これからもう少し色々な病院を見学してみて、地域医療について考えて
いきたいと思った。院長先生、師長さんをはじめ、看護師さんや看護助手さん、スタッフの
皆様には本当にお世話になりました。どうもありがとうございました。